DULL-COLORED POP

2009/09/11

DULL-COLORED POP活動休止のお知らせ

DULL-COLORED POPウェブサイトを閲覧頂きまして、誠にありがとうございます。主宰の谷賢一です。こういう内容なので、仏頂面をせずに、自分の言葉でご報告差し上げたいと思います。

2005年11月より、ひっきりなしの休みなしで公演活動を続けてきたDULL-COLORED POPは、2009年10月の第9回本公演『プルーフ/証明』『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』を持って一旦の活動休止となります。活動再開の時期は未定です。

活動休止の理由は、もはや一言では説明が尽きませんが、一言で言って「疲れちゃった」ということです。発展的なとか充電のためとか前向きな活動休止とか、音楽のアーティストはよく言うし、実際問題今回の僕らの活動休止も冷静に見ればそういうことではあるのですが、バカヤロー、そんな平然としたもんじゃない、マジで摩耗し尽くしたんだコンチクショウ。それは芸術的な問題でもあるし、個人的な問題でもあるし、経済的な問題でもある。ただ、芸術、個人、経済、どれ1つとして切り離せるものではないでしょう。俺は魂を削って演劇をやっていた。なんて平然と言えちゃうレトロで熱血な演劇人でありたいと思っています。

次回公演『プルーフ/証明』は、2年半あたためていた演出プランに、2度の他団体による上演を経て磨き上げられた独自翻訳、そして最高のキャスティングが生み出す生の感覚が重なって、俳優の身体から浮かび上がる生々しい存在のリアリティという演劇の根源を問う作品になります。何もない空間から演劇と真実が立ち上る瞬間を、劇場にて感じて下さい。死ぬほどいい戯曲です。

また、同期間中に日替わりで上演される『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』では、主宰・作・演出を務める谷賢一自らが、6年来の付き合いである劇団員・堀奈津美と2人芝居をお届けします。この2人だからこそできる、誰よりも・どこよりもディープな一瞬をえぐりたい。20世紀に書かれた世界で一番アヴァンギャルドな戯曲の1つであるサラ・ケイン作『4.48サイコシス』を、谷自らの翻訳・翻案にて洗い直し、演劇の基本文法に喧嘩を売るような破壊的な演出にさらすことで、今後のDULL-COLORED POPや演劇芸術そのものの未来を占う1本にしようという気概です。作家・戯曲としての評価が目立っていたDULL-COLORED POPですが、この1本を通じて、演出・俳優という演劇芸術のもう1本の軸を圧倒的に強く鮮烈に追求したい。過去最大の意欲作にして問題作となるであろうこの1本、お見逃しなきよう。

ライブペインティング、ロックバンド生演奏、不条理から現代口語劇まで振れ幅を行き来する短編7本同時上演、業界初・飲尿ミュージカル、古典悲劇調創作劇と、演劇の可能性を右から左まで縦横無尽に駆け回ってきたDULL-COLORED POPですが、ひとまずこの公演を持ってすべての引き出しを開け切り、充電だか漏電だかわかんねー時間を過ごします。今までDULL-COLORED POPを見続けて下さった皆様も、初めてご覧になるという方も、観に来て下さい。演劇とは何か、という問いへの、僕たちなりの答えを。

この活動休止に、一番深い悲しみを覚えているのは、他でもない私です。ただ、もう1つ高い階段へ登るために、どうしても必要な活動休止です。ハッタリでもブラフでもリップサービスでもなく、マジで休みます。怒り、憎しみ、悲しみ、自家撞着、虚脱、愛、信念、いろんなものを小脇に抱えて、増水した川に飛び込むような活動休止です。そのまま死んじゃえって感じ。僕は、あるいは僕らは、演劇を楽しむには、演劇に対して苦しみ過ぎた。

だからこそ今回の2作品では、もっと軽やかに、遊ぶように、演劇に取り組みたい。真剣な遊びは、真剣な仕事よりも、きっと真摯で情熱的で、そして快楽のにおいがする。そう、情熱と快楽こそが、神々の飲料水なんだ。

踊るように、歌うように、演劇というジャンルを見下すように、そして優しく抱き締めるように、『プルーフ/証明』『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』を上演して、休むぜ。眠るぜ。旅立つぜ。捨てるぜ、殴るぜ、ぶち殺すぜ。あぁ俺は気違いさ。そんな、ヒリヒリした演劇への愛憎が、愛情と憎悪が生み出す優しくも悲しいお話と、ただただ冷たく透明なお話を、どうぞお楽しみに。